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第18回異文化間教育学会研修会のお知らせ
研修テーマ 「英国の初等教育における演劇(英国ドラマ教育の理論)を導入した異文化理解教育」
概要  近年、英国の初等学校ではアジアに繋がる生徒の数が増加しており、英国の教師は、そうした生徒のことを考慮に入れて異文化理解教育の授業を実施することが必要となっています。このような授業のなかで、演劇は、児童が身体を通して異文化に対する理解を深めるとともに、異なる文化に属する級友とともに「よい社会とはどういうものか」を模索するために活用されています。
 本研修では、英国の初等教育における外国語教育政策とその一部をなす異文化理解教育の現状について解説し、続いて英国の初等教育の教師が、アジア(中国)をテーマとした異文化理解教育の授業のなかで演劇をどのように使用しているのかを紹介します。そして、演劇の如何なる側面(技法・理論)が異文化理解教育に有効なのかを検討していきます。
講師 飛田 勘文(ひだ のりふみ)氏(桐朋学園芸術短期大学)
桐朋学園芸術短期大学演劇専攻非常勤講師。2004年に演劇教育と児童青少年演劇の専門知識・技術を修得する目的で渡英する。英国ウォーリック大学教育学部のPh.D in Arts Educationにて、ジョナサン・ニーランズ教授に師事し、演劇教育の理論と実践について学ぶ。英国ローズ・ブルフォード・カレッジの助教を経て2015年3月に帰国し、現職に就く。
日時 2016年1月30日(土)13:00〜17:00ごろ(受付は12:45〜)
場所 駒澤大学駒沢キャンパス第二研究館1階102教場
田園都市線「駒沢大学駅」下車、徒歩10分 (急行は停車いたしません)
https://www.komazawa-u.ac.jp/access/ (交通アクセス)
https://www.komazawa-u.ac.jp/facilities/campus/komazawa.html (駒澤キャンパス)
プログラム 13:00〜14:15 講義「英国の初等教育における外国語教育、異文化理解教育、ドラマ教育の現状」
14:15〜14:30 休憩
14:30〜16:15 ワークショップ「英国の初等教育におけるドラマ教育を体験する」
16:15〜16:30 休憩
16:30〜17:00 ワークショップの振り返り
定員 20名(定員に達し次第、受付を終了いたします)
参加費 会員―無料(多文化系学会連携学会員を含む)
非会員―1,000円
お申し込み ■お申し込み方法
下記の学会第18回研修会専用メールアドレスに、お名前・ご所属・会員/非会員をご記入の上、メールでお申し込みください。折り返し、参加の詳細をご連絡いたします。
■お申込み先
第18回研修会 連絡メールアドレス:frynrak@aoni.waseda.jp
(担当:企画・交流委員会 古屋 憲章)

2015年度 異文化間教育学会第18回(関東地区)研修会
テーマ「英国の初等教育における演劇(英国ドラマ教育の理論)を導入した異文化理解教育」開催報告

企画・交流委員会関東地区委員
1.概要
・講師:飛田 勘文氏(桐朋学園芸術短期大学)
・実施日時:2016年1月30日(土) 13:00−17:00(受付は12:45より)
・実施場所:駒澤大学駒沢キャンパス第二研究館1階102教場
・プログラム:

13:00〜14:15 講義「英国の初等教育における外国語教育、異文化理解教育、ドラマ教育の現状」
14:15〜14:30 休憩
14:30〜16:15 ワークショップ「英国の初等教育におけるドラマ教育を体験する」
16:15〜16:30 休憩
16:30〜17:00 ワークショップの振り返り

・参加者:19名(会員 6名、非会員 13名)/+委員(坪井、横田、大味、古屋)+助手(2名)
・参加費:会員無料、非会員1,000円
2.詳細内容
2.1 講義「英国の初等教育における外国語教育、異文化理解教育、ドラマ教育の現状」
 飛田講師より、英国の初等教育おける外国語教育政策、異文化間教育、演劇(ドラマ教育)、外国語教育(異文化間教育)と演劇の接点に関する講義が行われた。以下、講義内容を簡潔に報告する。
1)外国語教育政策
英国の初等教育おける外国語教育政策は、次の三つの時期に分けられる。
  • 第 1 期(1964〜1999):初等教育における外国語教育の導入が試みられたこともあったものの、結局は見送られた。
  • 第 2 期(1999〜2014):労働党政権下の1999 年、ナショナル・カリキュラムのなかに選択科目として外国語教育が導入された。多言語多文化社会に取り残されないために、初等教育の段階から外国語教育と異文化理解能力を向上させる必要性が主張されるようになった。
  • 第 3 期(2014〜現在):現行のナショナル・カリキュラムにおける外国語教育の特徴として、次の五つが挙げられる。①実践的能力の達成。②文学作品の鑑賞。③オーセンティック教材の利用。④グローバルシティズンシップや異文化理解能力の背景化。⑤コミュニティと言語教育の切り離し。第2期における多言語多文化社会を前提とする外国語教育政策は後退し、現在は、一言語(英語)主義的な傾向が強まっている。
2)異文化間教育
 イギリスの初等教育において、異文化間教育は、外国語教育の一環として位置づけられている。そして、異文化間教育は、シチズンシップ教育と密接に関連している。そのため、外国語教育、異文化間教育、シチズンシップ教育は、別々の営みとしてではなく、横断する営みとして考える必要がある。
外国語教育=異文化間教育=シチズンシップ教育となったとき、単なる言葉(正しい綴りと発音と文法)の獲得や異文化への理解を超えた演劇への期待が高まる。
3)演劇(ドラマ教育)
 英国型演劇教育は、ドロシー・ヘスカッツにより創始された。ヘスカッツは、「生き抜ける演劇」を提唱し、演劇を他者の視点で社会や世界を見る・考えるための営みとして位置づけた。
4)外国語教育(異文化間教育)と演劇の接点
 演劇は他者の視点で社会や世界を見る・考えるための営みであることから、言語教育だけではなく、異文化間教育やシチズンシップ教育とも、密接に関連している。
2.2 ワークショップ「英国の初等教育におけるドラマ教育を体験する」
飛田講師のファシリテーションのもと、中国の童話「マー・リャンと魔法の筆」を題材に、英国の初等教育におけるドラマ教育を体験するワークショップが行われた。
【セッション1】
  • ウォームアップ1:―教室内を歩き回る。―指を使用してひらがなで空中に自分の名前を書く。
    ―体のほかの部分(肘、肩、お腹、お尻など)を使用してひらがなで名前を書く。
  • ウォームアップ2:―指を使って動物を描く。―実際にその動物になる。
  • 中国の生活:―カラーで印刷された中国の生活に関する絵や写真をもとに、「 何が描かれているか」、「そこで暮らしている人々が何を感じているか」「どういう印象を受けたか」をグループで話し合う。
  • ストーリーテリング・パフォーマンス:講師が「マー・リャンと魔法の筆」の一部を読み上げる。それを受け、参加者が当該のシーンを即興で演じる。
  • 貧しい者のために描く―討論:マー・リャンが貧しい者のために何を描いたか(子どもの場合と大人の場合)をグループで話し合い、話した内容を他のグループと共有する。大人の場合と子供の場合でリストを作成する。
【セッション2】
  • インターラクティブ・ストーリーテリング:―各グループでマー・リャンが貧しい者のために絵を描く場面を再現する。その際、演者は、自分が演じている登場人物がどのような気持ちかを意識する。再現した場面、および登場人物の気持ちを他のグループと共有する。
【セッション3】
  • マー・リャンと皇帝:―「お金持ちである皇帝のために絵を書くことは可能なのか?」というテーマで一つのシーンを即興で演じる。―皇帝の息子が不治の病にかかっている。皇帝はマー・リャンに万病に効く薬の絵を描いて、息子を救ってほしいとお願いする。―魔法の筆は、お金持ちのために絵を描けば筆が消えてしまう。そのため、マー・リャンは、肯定のために絵を描きたくはない。
【振り返り】
 主に演劇と異文化間教育の接点という観点でワークショップの振り返りが行われた。具体的には、参加者から次のような発言があった。
  • 自分で演技したり、他の参加者の演技を見たりすることで、「演劇=他者の視点で社会や世界を見る・考えるための営み」を実感することができた。
  • 即興であっても、登場人物の気持ちや状況をイメージしながら、演じていること気づいた。演じることをとおして、他者の心情をイメージするという点が異文化間教育と演劇の接点かなと思った。
  • 物語に入る前のワーク(「中国の生活」)と物語が必ずしもうまくつながっていないように感じた。ワーク(「中国の生活」)を行うことで、子どもたちが持つステレオタイプや偏見が強化されてしまう可能性もあるのではないか。
【感想】
 当日は、降雪も予想された冷たい小雨模様の一日だったが、講師の話に熱心に耳を傾け、19名の参加者とスタッフがワークショップに取り組み、振り返りでも積極的な発言があってドラマ教育の意義と可能性、問題点など今後に役立つに示唆に富む研修会になったように思う。(坪井)

(文責 古屋憲章)

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