2026年度 異文化間教育学会 特定課題研究テーマ
複数の差異が交差するところ:移民の語りに着目して
研究委員会
2026年度の特定課題研究テーマは、「複数の差異が交差するところ:移民の語りに着目して」である。公募で選ばれた発表の他に、異文化間教育学会論文賞受賞者による発表や、若手会員を含めた共同発表をそろえ、インターセクショナリティ概念を用いつつ、日本における移民の体験に迫っていきたい。
【趣旨】
異文化間教育学の特定課題研究はこれまで、ナショナリティやエスニシティに限らず、発達段階や障害といった差異にも着目してきた。「当事者」と「研究者」の関係性を問い直す研究方法論が模索され、異なる文化的背景をもつ人々が共創する社会を構想しようとしてきた。
本特定課題研究では、複数の差異が交差するところに注目する。数々のカテゴリーを相互に関係し形成し合っているものとして捉え、人間経験の複雑さを分析するツールとして、インターセクショナリティという概念がある。インターセクショナリティとは、「交差する権力関係が、様々な社会にまたがる社会的関係や個人の日常的経験にどのように影響を及ぼすのかについて検討する概念」(コリンズ&ビルゲ, 2021, p.16)である。この概念を批判的に用いつつ、同一人物の中にある複数のアイデンティティズを丁寧に紐解き、差異が交差する地点で何が起きているのかを明らかにしていく。
本特定課題研究が研究対象とするのは、日本在住の移民である。エスニシティ、ジェンダー、年齢、在留資格や社会的地位の異なる人々が、日本人との関係性の中で、日本社会の中で移民であることをそれぞれに経験し、語っている。本特定課題研究では、研究者が移民の声を聴き取り、読み解くだけでなく、研究者自身が移民として声を発してもいる。研究者である当事者も、当事者と共にある研究者も登壇者に据えながら、複数の差異の交差に関する多声的な対話が立ち上がることを期待している。
なお、インターセクショナリティという概念は、交差する権力関係を単に描写することにとどまらず、より包摂的で公正な社会に向けた問題解決を目指す意図をもって使用されてきた(コリンズ&ビルゲ, 2021, p.19)。本特定課題研究においても、抑圧や生きづらさ、抵抗や解放といった移民の体験の機微を掬い取りながら、異文化間教育の探究と実践を推し進めていきたい。
Collins, P. H., & Bilge, S.(2021)小原理乃訳,下地ローレンス吉孝監訳 『インターセクショナリティ』人文書院(原著 2020)
【日時】
2026年6月20日(土)9:30~12:00
【場所】
中京大学 名古屋キャンパス
【趣旨説明】
渋谷 真樹(日本赤十字看護大学)
【登壇者】
- 吉岡(ヨシイ) ラファエラ
- (東京大学)
- 本間 桃里
- (同志社大学)
- 杉原 由美
- (慶應義塾大学)(他2名と共同発表)
【指定討論者】
- 清水 睦美
- (日本女子大学)
【企画・運営:研究委員会】
- 渋谷 真樹
- (日本赤十字看護大学)
- 照山 絢子
- (筑波大学)
- 太田 知彩
- (筑波大学)
- 杉原 由美
- (慶應義塾大学)
- 松田 デレク
- (明治大学)

