特集「コミュニティと異文化間教育―共生社会の新たなまなざし―」
コミュニティとは、「人が共に生きそれぞれの生き方を尊重し、主体的に働きかけていく生活環境システム全体」(山本, 1986(『異文化間教育事典』p.193 再引用))であり、地域社会だけでなく、学校、職場、集団、組織などを含む包括的な概念である。これまで、『異文化間教育』では、地域ネットワーキング、地域におけるニューカマー支援など地域・集団などの研究はなされてきたが、コミュニティとして包括的には取り上げられていない。地域社会での住民によるコミュニティ、そして、増加する外国人によるコミュニティなど、コロナ禍でもオフ・オンラインでさまざまコミュニティが常に構築され続けている。これは、社会での人とコミュニティの関係性を再考する契機となろう。本特集号では、国内外で増加してきているマイノリティのコミュニティを取り上げ、模索する社会での彼らの生き方、生活を異文化間教育学的視点から考察する。現在、コミュニティは、地域社会での対面的関係を基盤とするものもあれば、インターネットを介した仮想的なコミュニティもあり、人とコミュニティの関係が多様化している。また、SNS(Social Networking Service)の普及は、移動を伴わなくても国や地域を越えて全く面識のない人々と出会い、移動前から移動先の人とつながることや、移動後も関係性を維持すること、必要に応じて関係性を再構築すること等も可能となった。国境を越えた移住先での遠隔地ナショナリズムの発生・高揚もその一例と言えるだろう。このようなSNSがもたらす人間関係の在り方の変化・可能性も踏まえ、現在のコミュニティの実態を明らかにし、社会でのコミュニティの在り方を検討することは、今後の多文化共生社会の可能性と課題が明らかになり得る特集になると考える。
コミュニティ例:
国内での少数言語コミュニティ、エスニックコミュニティ、若者コミュニティ、子育てママコミュニティ、海外での日本人コミュニティ
SNSの例:
LINE、You-Tube、Twitter、Instagram、Facebook、TikTok、KakaoTalk、WeChat
引用文献
異文化間教育学会(2022)『異文化間教育事典』明石書店