理事長挨拶

渋谷 真樹 (日本赤十字看護大学)

2021年7月

 2021年度からの2年間、理事長を拝命いたしました。謹んでご挨拶申し上げます。
思えば、私が本学会に入会したのは四半世紀前。留学を終えて、帰国した直後のことでした。留学先で、日本の学校がどうしても合わずに「ロンドンに帰ってきた」という日本人女子高校生に偶然出会ったことがきっかけで、私は「帰国子女問題」を知りました。制服のスカートの長さを教師に定規でチェックされる、休み時間にトイレへ行くにも仲良しといっしょ、自分の英語が授業で生かされていると思えない…。彼女が語るそうした違和感から、私は学校文化のちがいや、文化間を移動する若者の生きづらさを意識するようになりました。
 こうして研究のテーマや領域を変更して帰国した時には、以前の指導教員は退職しており、私はなんだか寄る辺ない気持ちになってしまいました。そんな私が、未完成原稿をもって飛び込んだのが、前理事長である佐藤郡衛先生の研究室。そこで紹介されたのが、本学会です。「根無し草」の私を育ててくれた本学会に少しでも恩返しができるよう、鋭意努めてまいります。
 任期中に私が目指すことはなにより、学問領域や研究歴などの多様性が集う本学会の特徴を活かし、異文化間教育を探究する場にふさわしい、包摂的な環境を維持発展させることです。そのために、分野や世代を越えて学会員が交流できるネットワーキング委員会を新設しました。研究委員会は、特定課題研究に公募制を取り入れ、志ある会員が研究のフロンティアで活躍できる場をつくっていきます。また、広報・ICT委員会は、学会内外により積極的に情報を発信すべく、さっそく作業に取り組んでいます。
 次に、本学会のフロンティア精神を引き継ぎ、現代社会における喫緊の課題や新規なテーマに積極的に取り組んでいきます。さまざまな文化的背景をもつ人々が共に生きていく必要性は、今日、より切実さを増しています。こうした課題にいち早く取り組んできた本学会の知的財産を継承するためのアーカイブ作りや、新しい研究成果をより鮮明に届けるための読書会などを、企画委員会が計画中です。
 そして、本学会の活動を、よりグローバルに展開していくことを目指していきます。新設したグローバル展開委員会で、問題意識や研究テーマを共有する研究者や学会が、国境を越えてよりダイナミックに交流できるように、方策を考えてまいります。たとえば、海外の学会等の情報提供や英語での研究成果発信を促進していきます。
なお、事務局は、明治大学に置かせていただきました。甚大なお仕事を明るく前向きにお引き受けいただいている事務局の皆様に、心より感謝申し上げます。また、今回、学会でのキャリアに関わらず参画しやすい環境をつくり、学会の活気を増進するために、あえて若い世代を中心とした常任理事会を組織しました。こうした決断は、長年本学会に関わってきた会員には、引き続き本学会を牽引していただけるという信頼があってこそ可能なことです。ご協力に感謝いたします。
 共に有意義な活動を展開していきましょう。どうぞよろしくお願いいたします。

歴代理事長

2021年~2022年度 渋谷 真樹
2019年~2020年度 佐藤 郡衛
2017年~2018年度 佐藤 郡衛
2015年~2016年度 加賀美 常美代
2013年~2014年度 加賀美 常美代
2011年~2012年度 横田 雅弘
2009年~2010年度 横田 雅弘
2007年~2008年度 山田 礼子
2003年~2006年度 小島 勝
2001年~2002年度 佐藤 郡衛
1999年~2000年度 加藤 幸次
1993年~1998年度 江淵 一公
1990年~1992年度 星野 命
1981年~1992年度 小林 哲也