異文化間教育学会第35回大会のご報告

 異文化間教育学会第35回大会が、2014年6月7~8日に京都の同志社女子大学 今出川キャンパスで開催されました。
 6月6日のプレセミナーは、「フィールドワークで『研究』を、そして『論文』へ ―文化人類学、教育社会学、発達心理学からのアプローチ―」と題して行われました。会員の皆様からの強い要望で、急遽受け入れ枠を広げ、予定していた人数より多い58人の参加者となりました。プログラムは2部構成となっており、1部の全体会では、異文化間教育学の隣接領域である文化人類学、教育社会学、発達心理学を専門とし、かつフィールドワークを研究手法に取り入れている講師3人(渋谷真樹・佐藤千瀬・南出和余)を迎え、ご自分の研究をもとに、研究の焦点の当て方、データ収集、データ加工の仕方、論文や報告書のまとめ方などについてお話し頂きました。その後2部では、「フィールドへの入り方とデータ収集」「データ加工の仕方」「論文や報告のまとめ方」の3グループに分かれ、各グループで質疑応答が行われた他、フィールドワークに関する研究上の悩みやアイデアなどの交換が活発に行われました。終了後も熱心に意見交換をする姿が見られました。フィールドワーク研究に関する関心の高さが伺われたプレセミナーでした。
 7日からの本大会には、348名という数多くの参加がありました。とりわけ当日参加者数が予想をはるかに上回りました。発表も例年以上に申し込みが多く、個人発表、共同発表、ケースパネル、ポスター発表の合計が103本となりました。特に若手の活躍が今回の大会では目立つとともに、従来の異文化間教育学会では扱わなかったテーマが増えるなど、研究テーマに広がりが見られました。
 初日の特定課題研究「実践をまなざし、現場を動かす異文化間教育学とは?」では、実践報告を読み解くという意欲的で斬新な企画に、多くの参加者が熱心に耳を傾けていました。今後の異文化間教育学の一つの方向性を示す企画になったと思われます。
 懇親会は歴史ある新島襄旧邸横の新島会館で行われ、当日参加者が多かったこともあり、料理が足りないほどの盛況ぶりでした。終了後も同志社ブランドのお酒を飲みながら会場で歓談したり、京都市内の飲食街へと向かういくつかのグループを見かけました。大いに交流ができたのではないかと推測致します。
 2日目の公開シンポジウム「生涯発達の視点を踏まえた日本における外国にルーツをもつ人への支援 ―保育・教育・子育ての視点から―」は、京都府と京都市の教育委員会の後援を受け、国際都市京都の特色を活かしたものにしようと企画されました。異文化間教育学会でも以前から、外国にルーツをもつ子どもたちの教育的支援について取り上げられてきましたが、本シンポジウムでは、子どものみならず、彼らを取り巻く大人にも焦点をあてて、生涯発達の視点を踏まえた支援のあり方について検討しました。そして対象者の発達段階や国籍等の違いによる支援の方法や内容の違いに目を向けるとともに、同じアジア圏であり、外国にルーツをもつ子どもが日本以上に多く居住している台湾や、国際結婚家庭に対する制度改革を試みている韓国での支援とも比較をしながら、今後の日本での外国人支援について考察しました。被支援者と支援者との関係性の組み替えや、高齢者支援などいくつかの課題が出されるとともに、生涯発達的視点の導入の意義が議論され、有意義なシンポジウムとなりました。2日目の午前中という観光にも最適な時間帯にもかかわらず、多くの会員・非会員の方が参加をし、質問の多さからこの領域に対する関心の高さが伺われました。2日目の午後には個人発表、共同発表、ケースパネル、ポスター発表が夕方まで行われました。最後まで熱心に会場に残られた参加者によって白熱した議論が行われましたことは、企画者として嬉しい限りでした。
 今回の大会運営はスタッフの人数が少ない中で、若手のコアスタッフが頑張ってくれました。特に東アジアの留学生達の働きぶりと、日本人学生との協働は、将来の日本を予想させるものがありました。心配された天気も大会中には晴れ間が見られるなど、なんとか天気が大きく崩れることはありませんでしたが、終了直後に雨が降り出し、帰途を急ぐ方には気の毒でした。しかし逆に雨宿りのために会場に残り議論の余韻を楽しんでいる方々の姿も見られました。何かと行き届かない点もありご不便をかけたかと思いますが、参加者の暖かい言葉に救われ、また熱心な議論の姿に励まされ、大会を無事終了できましたことを心から御礼申し上げます。

第35回大会準備委員長 塘 利枝子(同志社女子大学)