2026年度 第1回公開研究会

複数の差異が交差するところ:移民の語りに着目して(仮)

研究委員会

異文化間教育学はこれまで、ナショナリティやエスニシティ、人種に限らず、障害やジェンダー、セクシュアリティといった差異にも着目してきた。すなわち、海外帰国生、留学生、移民などの国家間を物理的に移動する人々だけではなく、さまざまな文化の間に生きる人々の教育を扱ってきた。けれども、そのような差異を付与された対象を並列するにとどまらず、同一人物の中にある複数のアイデンティティを丁寧に紐解き、差異の軸が交差する地点で何が起きているのかを集中的に論じた蓄積は、いまだ十分ではない。
 そこで、本特定課題研究では、複数の差異が交差するところに注目する。複数のマイノリティ性を抱えることによる生きづらさの訴えは、かつてから国内外に存在し、強いインパクトをもたらしてきた。そうした状況を分析するツールとして、インターセクショナリティという概念がある。インターセクショナリティとは、「交差する権力関係が、様々な社会にまたがる社会的関係や個人の日常的経験にどのように影響を及ぼすのかについて検討する概念」(Collins & Bilge, 2020, p.16)である。二重三重のマイノリティであるがゆえの困難さを訴えることに留まらず、重なり合うこと、複数であることに焦点を絞ることによって、生きづらさの糾弾の先―共振や連帯といった言葉を想起するのは時期尚早だとしてもーにたどりつけるかもしれない。本企画では、インターセクショナリティという概念を手がかりにしながら、複数の差異の交差するところにおきる暴力や排除、そして、それらの低減の可能性を精査していきたい。

 Collins, P. H., & Bilge, S. (2020)/小原理乃訳, 下地ローレンス吉孝監訳 (2021)『インターセクショナリティ』, 人文書院.
 
 第一回公開研究会では、マイノリティ性が重なり合うことによっておきるせめぎ合いについて、下記3つの話題を提供いたします。これをもとに、フロアの皆さんと共に事例を分析し、インターセクショナリティという概念の有効性や限界について検討していきたいと思います。

登壇者およびタイトル

  • 吉岡(ヨシイ)ラファエラ会員(東京大学)
    「トランスナショナルな移民女性のインターセクショナリティ研究―在日ブラジル人女性の生涯学習経験に着目して―」
  • 本間桃里会員(同志社大学)
    「移民×非正規滞在(仮)」
  • 杉原由美会員(慶應義塾大学)(他2名と共同発表)
    「移民第二世代ミュージシャンのインターセクショナリティ研究―音楽産業における異文化の商品化と消費への交渉/抵抗―」

日時

2025年12月14日(日)10時~12時

開催方法(ハイブリッド形式)

対面:日本赤十字看護大学広尾キャンパス

オンライン:Zoom

※申し込みをいただいた方に開催日2~3日前までに会場の詳細、およびZoomリンクをお送りします。

申込方法

以下のGoogle Formへの入力をお願いします。12月12日(金)までにお申し込みください。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdWKMEx4sbql4o4v9Y9qt6LAMrvxLjRlbgI2Wlo5FpF2tBDjA/viewform?usp=header

※本研究会の参加は、異文化間教育学会の会員に限定いたします。予めご了承ください。

申込方法

異文化間教育学会研究委員会
 iesj.research.2025@gmail.com