2023年度 特定課題研究「公開読書会」

2023年度 異文化間教育学会 特定課題研究テーマ
「移動」から異文化間教育を展開する−象徴的移動に着目して-

公開読書会のお知らせ

                                        研究委員会

2023年度特定課題研究では、「象徴的移動」を切り口として、移動概念の応用・発展可能性を議論し、学際的(transdisciplinary)な異文化間教育研究を展開することを目指しています。特定課題研究への取り組みの一環として、「象徴的移動」という概念やそれをめぐる議論に対する理解を深めることを目的として、公開読書会をオンラインにより実施します。どうぞふるってご参加ください。

日時 

2023年2月11日(土) 16:30~18:30 (オンライン開催)

取り上げる文献

  1. Hage, G., 2005, “A Not So Multi-Sited Ethnography of a Not So Imagined Community.” Anthropological Theory , 5 (4), pp.463-475.
    [翻訳書] ハージ, G.,  (塩原良和訳) 2007,「存在論的移動のエスノグラフィ-想像でもなく複数地調査でもないディアスポラ研究につい て」 伊豫谷登士翁編 『移動から場所を問う-現代移民研究の課題』 有信堂公文社, pp.27-49.
  2. Hage, G., 2015, Alter-Politics: Critical Anthropology and the Radical Imagination. Victoria: Melbourne University Publishing.
    [翻訳書] ハージ, G., (塩原良和・川端浩平監修、前川真裕子・稲津秀樹・高橋進之介訳) 2022,  『オルター・ポリティクス-批判的人類学とラディカルな想像力』 明石書店.

当日の概要

当日は、参加者が上記の基礎文献を事前に読んでくることを前提として、「象徴的移動」、とりわけ今回の特定課題研究の鍵概念のひとつである「存在論的移動/実存的移動」に焦点を当てて議論を行なう予定です。
ご参加される際は、2つの文献について、(1)興味深かった点、(2)理解が難しかった点、(3)ご自身の研究や異文化間教育研究に応用できそうな点、を考えてきてください。これら3点について、グループに分かれて意見交換を行ないます。

申し込み

締め切り:2月9日(木)https://forms.gle/JifmzyabjcqGqMGJ8

*非会員の方もお申し込みいただけます。

お問い合わせ

iesj.research.2021@gmail.com (研究委員会)

異文化間教育学会 2023年度公開読書会報告

研究委員会

 

2023年度特定課題研究「『移動』から異文化間教育研究を展望する-象徴的移動に着目して-」の取り組みの一環として、2023年2月11日(土)16時半~18時半まで、公開読書会をオンラインで実施した。公開読書会は、特定課題研究の取り組みとしては初めての企画であるが、「象徴的移動」という概念やそれをめぐる議論に対する理解を深めることを目的とした。

基礎文献として取り上げたのは、Hage,G.の『オルター・ポリティクス』 と「存在論的移動のエスノグラフィ」である。参加者は事前にこれらの文献を読み、(1)興味深かった点、(2)理解が難しかった点、(3)自身の研究や異文化間教育研究に応用できそうな点、を考えてくることとした。当日は最大19名(会員9名、研究委員会関係者10名)の参加があった。

前半は、芝野会員から、趣旨説明とグループワークの説明がなされた。趣旨説明においては、「象徴的移動」および「存在論的/実存的移動」という2つの重要概念についての解説も行われた。続くグループワークでは、4つのグループを設定し、約1時間にわたって、上記3点ついての意見交換が行われた。グループワークではJamboard を使用し、各自のコメントを可視化・共有しながら意見交換を進めた(参考資料としてJamboardの内容を掲載)。 

後半は、各グループで行われた意見交換の内容を全体で共有した。どのグループでも、「アンチではなくオルターという視点の意義」「オルターの創造可能性」「移動可能性/不可能性」などをめぐって、活発な意見交換が行われた様子が窺えた。

事後アンケートでは、多くの参加者が2つの基本文献に関心を持ち、学びが得られたことが窺えた。グループディスカッションにより一人で読んでいては気づかない点に気づかされたというコメントが多かったが、「象徴的移動」に対する理解の深まりがほしかったという指摘もあった。

「象徴的移動」にまつわる議論を深く展開できなかった要因として、文献が難解であったため理論的前提の共有や複雑な概念セットの理解に時間を取られてしまったことがあげられる。一方、参加者と議論を重ねていく中で、「象徴的移動」を複数の学術領域や多様な概念枠組との関係性において理解することの重要性に気づくことができた。こうした課題や発見を第二回公開研究会及び第44回大会に役立てていきたい。